前回はオックスフォード大学の博物館であるアッシュモレアン博物館にての作品の調査をご紹介しました。菊の花を立体的に表現した鐔など、技術的にも素晴らしく珍しい作品が多く、皆様にもアップ画像を通してその魅力を感じていただけたと思います。
キュレーターのポラールさんには収蔵庫や展示室も案内していただきましたので、今回はその一部をご紹介します。
収蔵庫は博物館の展示室を取り囲むスペースにあります。貴重な収蔵品を後世に伝えるための保存においては、カビやさび、乾燥によるひび割れなどから守るため温湿度管理が重要です。そのため収蔵場所は作品の材質の違いにより分けられています。紙や木製品など有機物の作品と金属などは保管に適した温度と湿度などが異なるためです。鐔など刀装具などの金工品は本来は東洋の陶磁器とは別の収蔵庫に保管したいとのことですが、湿度管理できるケースに別途保管することで対応しているようでした。
湿度管理表が貼られたケース
収蔵庫の一部しかご覧いただけませんが、膨大な作品数のためポラールさんも全ての作品を確認できてはいないとのこと。WEBにもコレクション画像の全てが掲載されている訳ではないらしいので、刀装具の縁や頭など、まだ未発見の木目金作品があるかもしれない!と、調査が進むことを期待して保管庫を後にしました。
アッシュモレアン博物館には世界各国の展示室があり、立派な日本展示室もあります。
連載第11回でもご紹介しましたが、茶室も作られていて、毎月1回お茶会も催されています。このお茶室の設営の様子もパネルで紹介されていました。
狭い空間の中での繊細な造作。日本の数寄屋(茶室)建築技術は芸術ですね。
ポラールさんによると、来館者の日本文化への興味は本当に高いため、作品について良く知ってもらうために展示方法を工夫しているとのこと。印籠をどのように携帯していたかご存知でしょうか。着物の帯に通し根付を帯の縁に引っ掛けぶら下げて使用されていました。その様子が分かるようにと説明イラストと共に、バーに根付を引っ掛けて展示されています。
浮世絵や日本画などの展示作品はポラールさんが監修し毎月展示品を入れ替えているとのこと。来館者にもっと日本美術に親しんでもらえるように、作品を手に取ってさわれるコーナーを設けたい、など熱心に語るポラールさん。数時間に及ぶ鐔の調査の後、閉館時間まで丁寧にご案内いただきました。
今回の訪問によって、江戸時代の木目金の鐔をはじめとする日本の素晴らしい伝統芸術作品が、異国の地でこんなにも愛されて伝えられていると知ることができました。
私たち杢目金屋も、江戸時代から伝わる木目金の作品の調査研究をこれからも続け、作品だけでなくこの貴重な技術をこれからも未来に伝え続けていきます。
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