木目金フェアにお越しいただくお客さまから、欲しいアイテムとしてジュエリー以外に「腕時計」を挙げていただくことがあります。この度、文字盤を木目金で制作した腕時計が販売されることとなりました。セイコーウオッチ株式会社と杢目金屋がコラボレーションし、セイコー高級ブランド<クレドール>の「ブランド誕生45周年記念モデル」として限定販売されます。
「木目金ダイヤル」としてクレドールのWEBサイトに特設ページが設けられています。
「クレドールがこれまで歩んできた45年の年輪。
これを表現するため、江戸時代から伝承されてきた
金属工芸技術「木目金(もくめがね)」でダイヤルを飾ります。
日本で生まれ、育まれてきた独自の技法が織りなす多彩な模様は、
美しさとともに永遠を紡ぎます。」
クレドールは、100年以上に及ぶ SEIKOの歴史に培われた匠の技、時計本来の伝統工芸技能を守りつつ、常に新しいスタイルを作り出していく提案性を失わないことがブランドコンセプトです。世界に通用するオリジナリティとして、日本人の美意識を凝縮させたデザインを目指し、これまでにも伝統工芸の漆芸を取り入れ、漆黒の漆塗に螺鈿細工と蒔絵が大胆に施されたモデルも発売されています。
「木目金ダイヤル」のデザインコンセプトは「風杢(かぜもく)」
日本の原風景と言える風になびく稲穂をイメージし、黄金色に染まった豊饒の風景をデザインとして昇華させたオリジナルデザインです。
かつて江戸時代に鐔工の高橋興次は「竜田川を漂う紅葉」や「吉野川に浮かぶ桜」のイメージを木目金により刀の鐔の中にデザインしました。流れゆく川が移ろいゆく時の経過を表現しています。今回は時計の文字盤という小さな世界に、目には見えない「風」を表現し、そこに「時」の存在を可視化しました。
今回は、杢目金屋でも初の試みとなったこの時計の文字盤制作の工程をご紹介いたします。
文字盤の木目金は18Kホワイト・イエロー・ピンクゴールド、シルバーの金属により制作しています。
最終的に金属を伸ばして完成した時点の模様を想定してそれぞれの色の金属のプレートを重ねます。通常のリングを制作する時よりも重ねる板が大きく、枚数も多いため、接合にさらなる工夫が必要です。
1枚のプレートの厚みは0.15~0.2㎜。積層して電子炉にて拡散接合します。
1点1点リューターを使用して手作業で彫りを施します。彫りの深さを変えることで表面に出てくる金属の色を変えますが、彫り、加熱、圧延を繰り返し模様を制作していきます。
最終的に文字盤となる板の厚みは0.8mm。その厚みまで伸ばした時に、理想通りの模様になるように、慎重に彫りと伸ばしを繰り返します。
文字盤の大きさの円形に切り出し、最後に模様を際立たせ表情が出るように表面仕上げをして完成です。
この後セイコーウオッチ株式会社にて時計へと仕立てられます。18Kピンクゴールドのケースには、極薄手巻きムーブメント「キャリバー 6890」がおさめられています。厚さわずか1.98mmの薄さゆえに、熟練した時計師でも一日にわずか1個から2個しか組み立てられない、限られた職人の高度な手仕事により生み出される贅沢な逸品に仕上がっています。
今回のコラボ商品は、杢目金屋でいつも制作している結婚指輪とはまた一つ違う難しさがあったようです。その辺りを職人に語ってもらいました。
・試作について
最終的に伸ばして完成した時点の模様がイメージ通りになるように、0.05mm単位で1枚1枚の積層の厚みを変えながら何度も接合、彫りを繰り返しました。文字盤という限られた面積であり、厚みが0.8㎜と決まっているため、積層を深く彫りすぎると規定の厚みになったときに彫跡が表面に残ってしまう。浅くすると模様のイメージが単調に見えてしまう。何層目のシルバーの厚み、ゴールドの厚みを変えるかで模様の印象が大きく変わります。完成品にたどり着くまでいくつの試作をしたかわからないくらいです。
・模様について
手作業によるため二度と全く同じ模様にならない、唯一無二の文様が生まれることが木目金の醍醐味ですが、今回は「風杢」という模様のイメージを保つように、ほぼ同じ模様を制作する必要がありました。少しでも表面を削りすぎると違う模様になってしまうため、刃の角度を一定に保つのに苦労しました。
・仕上げについて
表面に艶消しの加工を施しますが、木目金の特性として数種類の金属を使用しており、素材ごとに硬度が異なるため、表面を荒らす作業の際にむらが起きやすくなります。そのうえリングとは違い広い面積のため、均一な印象に仕上げるのに苦労しました。
また、普段は「平面加工」は行ないませんが、今回は時計という精密機械に設置する文字盤のため為、完全な平らな板の状態に仕上げる必要があります。完成品の厚みは「0.8mm」。硬度の異なる金属でできた極薄の板を完全に平面にするため、ローラーワークやプレスの工程をかなり工夫しました。
WEBサイトで詳しい情報もご覧いただけます。
セイコーウオッチ株式会社https://www.credor.com/45th/mokumegane.html
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